1,日本の手技療法で法律の定めに基づき、国から独立開業権が認められている職業に「あん摩 マッサージ 指圧師」「はり師」「きゅう師」「柔道整復師」という職業があります。
これ以外法律で定められた、独立開業権が認められている手技療法の免許・資格は存在しません。
あん摩 マッサージ 指圧師・はり師・きゅう師がこれらの業を生業とした場合、医業類似行為として扱われておりますが、本来あはき業は医業の一部であるとの解釈もされております。その根拠として以下の理由が挙げられます。
◎ 根拠: あん摩 マッサージ 指圧師、はり師、きゅう師等に関する法律 / 第一条
「医師以外の者で、あん摩、マツサージ若しくは指圧、はり又はきゆうを業としようとする者は、それぞれ、あん摩マツサージ指圧師免許、はり師免許又はきゆう師免許(以下免許という。)を受けなければならない。」
つまり、あはき師法第一条の規定は、医師法第十七条(医師でなければ医業をなしてはならない)に対する特別法規定であって、特例措置(業の限定的解除)として、あん摩 マッサージ 指圧師・はり師・きゅう師免許を受けた者に限り、行為を限定的に解除したものであり、医師が行う行為は医業である。
↑上記は社会保険研究所発行 / 厚生省保険局医療課監修の『療養費支給基準』平成10年7月版162ページ掲載、昭和25年2月16日医収第97号 / 厚生省医務局長回答を根拠。
2,理学療法士(PT)、作業療法士(OT)というリハビリを専門とする職業もありますが、医師の指示のもとに施術する事が決められており、医業類似行為とは区別され、医療として医療従事者に該当します。したがって独立開業権は認められておりません。通常は病院での勤務が一般的ですが、介護施設などでの機能訓練指導員としての業務が認められております。
3,法律に定めのない無届・無免許医業類似行為が存在しております。これは「 整体 」「 カイロプラクティック 」「 リフレクソロジー 」「 つぼ療法 」「 リラクゼーション 」「 ボディケア 」「 全身もみほぐし 」…その他様々な名称で行われておりますが、法律では明確に禁じられているにも関わらず、健康に害を及ぼす恐れの無い立証は一切なされていないまま、害を及ぼす恐れは無いという、現実とはかけ離れた建前で取り締まりがなされておりません。
◎ あん摩 マッサージ 指圧師、はり師、きゅう師等に関する法律 / 第十二条
「何人も、第一条に掲げるものを除く外、医業類似行為を業としてはならない。ただし、柔道整復を業とする場合については、柔道整復師法(昭和四十五年法律第十九号)の定めるところによる。」
つまり、独立開業できる手技療法は、法律で禁止を解除されている手技(あん摩・マッサージ・指圧・鍼灸・柔道整復)以外、何人(なんびと)にも業とすることが禁じられております。
明治憲法(大日本帝国憲法)の時代から、あん摩、はり、きゅう、柔道整復は法律の定めに基づいて営まれてきました。そして戦後の新憲法(日本国憲法)に於いても、手だけで施術する手技で、法的に業として認められたものは、あん摩(マッサージも含まれていた)と柔道整復だけでありました。
その後昭和30年に法第161号によって、療術の一種であった指圧もあん摩師の業範中に含められましたが、その指圧には整体も含まれているのが歴史的経緯であります。
療術の法制化を議論する上で、指圧と整体は同種療術の認識として 厚生委員会で議論 されており、法第161号で あはき師法に指圧も追加されたことによって、整体は「指圧」の業範囲のままで、その後療術は独立法制化されていないため、現在も あん摩 マッサージ 指圧師の業範囲に含まれているのが歴史的事実であります。
そして、昭和35年の最高裁見解を受け、国は「法律に定めのない医業類似行為」について、昭和37年3月から昭和38年12月までの間、中央審議会で21回におよび慎重な審議が行われ(現在審議記録は非公開)、改めて あん摩(マッサージ・指圧含む)、柔道整復以外の手技がすべてあはき師法で規制出来るよう対策を講じたのであります。
昭和39年にあはき師法を改正して、それまでに届出をした療術師には、無条件で一世一代に限り、その療術を業とすることを認め、あはき師法で身分を保障し、あはき師と同じ義務・責任を課して営業を認めました。
したがって、本来あはき師法の名称は、「あん摩マッサージ指圧師、はり師、きゅう師法」となるべきですが、届出をした療術師の身分を法的に明らかにする必要がありました。
そのため、届出をした療術師の身分を「等」と称し、あはき師の法律名称に加えたのであります。よって、あはき師の法律名称にある「きゅう師等に関する法律」の、「等」が届出をした療術師の身分を指しているものであります。
このあはき師法の改正をきっかけに、それまで「あん摩師」の業範中に含めていた、マッサージ・指圧の名称も明記した、現在の「あん摩 マッサージ 指圧師」という、取って付けたような名称になったのであります。
したがって、リラクゼーション、もみほぐしなどと称しているものはあん摩師の業務行為であり、エステ、アロマ・リンパマッサージ(セラピー)、ロミロミ、トリートメントなどと称しているものはマッサージ師の業務行為であり、整体、カイロプラクティック、つぼ押し、リフレクソロジーなどの圧迫療法や骨格矯正は、指圧師の業務行為に含まれているのが歴史的経緯であります。
※現在エステは特定商取引法に於いて、目的が定義されており、医業類似行為には含まれないものとされておりますが、法律上の免許・資格は存在しません。
リラクゼーション業者は、自分たちの行為は「癒し」の提供で、治療目的では無いと言い訳しておりますが、「癒し」の言葉はトリックに過ぎません。
日本では昔から「傷を癒やす」「傷が癒えた」と言います。
つまり「癒し」とは、「治す」「治る」と同意語なのであります。そして国民病とも言われ、辛さや苦痛を伴う「肩こり」「腰痛」を癒していると言っているのです。
「肩こってますね」と整体師に言われたことはない?実は違法の可能性が - シェアしたくなる法律相談所
しかし現実には、皆さんもマスメディアやネットでご存知のように、ケガを負わされた健康被害が多数発生していて社会問題となっており、死亡事故まで起きているのが実態であって、無法施術者が拡大解釈によって拠り所としている、最高裁見解に明らかに違反しております。これを厳格に取り締まらない行政の責任が問われるべきです。
総務省|消費者事故対策に関する行政評価・監視 -医業類似行為等による事故の対策を中心として-<結果に基づく勧告>
手技による医業類似行為の危害-整体、カイロプラクティック、マッサージ等で重症事例も-(発表情報)_国民生活センター
ちなみに五所川原市では、市の広報印刷物その他市有財産等を広告媒体として広告を掲載する事業で、「法律に定めのない医業類似行為」は、掲載に不適当なものとして、広告掲載を申し込んでも掲載されません。
国民の皆さまにおかれましては、手技療法免許制度の法律と正しい知識をご理解いただき、各専門職の国家免許者からの施術を受けられますようお願いいたします。